呪われし焔

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 挑発とも称賛とも取れる、レオの反応。返事をしたあたしの顔を見た時、彼は少しだけ口角を釣り上げた。直後、今度はその姿が消える。あたしは再び構えて彼の二撃目に備えた。  左後方、あたしの背を狙った、高速の刺突が走る。寸でのところで突きを回避。あたしが右手側へ軽く飛んだその先に、二度目の刺突攻撃が加わった。 「くっ……――外れた?」  着地を狙ったそれは、しかし当たらない。……いや、これは外したんじゃない。剣の先と刀身は、あたしの顔の右側すれすれの位置で動きを止めていた。 「……何のつもりよ」 「二年前、耳にしたことがある。若干十九歳にして、世界最高峰の退魔の力を持つ女剣士だと噂されていた者のことを」 「それが、あたしだと?」 「……世界は広い。上には上が居るものだ。当然私より強い者も、世界の何処かには存在するのだろう」  体勢を変えないまま、問答が続く。あたしは左手側へ飛び退こうとしていて、レオは大剣を突き出したままで。 「おっと? 両者の動きが止まってしまいました! 何やら話し込んでいる様ですが……?」  その状況に、レフェリーが訝し気な声を上げる。観客席の方からからも、どよめきが生まれ始めた。しかし、レオは気にしていない様子だ。 「今、お前はここで一度死んだ。……お前は敗北者だ。一つ、私の要求を聞いて貰おう」 「あたしに、あんたの物になれとでも?」 「……生憎、女には困っていない。確かにお前は良い女だが、今欲しいのはお前の退魔士としての腕だ」 「……ふぅん、結構な物好きじゃない」
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