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そして、今から約二ヵ月前。奴らは遂にあたしの幼馴染であるリースを、魔王スルトの元へと連れ去ってしまったのだ。リースに同行していたルミ姉とクロエさんは、今はノエルさんの孤児院に身を寄せている。
「魔王スルトは、優れた素質や能力を持つ人間達を自らの配下とする為、日夜暗躍しています。彼の居城へ連れ去られた者は、呪われた刻印をその身に刻まれる。……消えぬ炎の鎖、その鎖に縛られ、不死の命を与えられるのです」
「魔族の体にその刻印を刻むより、ヒト――特に人間へ刻み込む方が、より強い力を与えられるらしいわ。……リースは、あたしの幼馴染のあいつは、そんな人間と魔族のハーフ。もしあいつが呪われたら、あいつの体がどうなってしまうのか……」
初めの内はリースの命を奪う為に動いていたらしい、元勇者パーティーの三人。けれど、いつしかその目的はスルトの考えによって、全く別の形へと変わっていった。
あたしとロト姉の話を、レオは黙って聞いている。その逞しい腕を組み、何かを考える素振りを見せた。ややあって、彼が再び口を開く。
「アルナミア・オル・エリュシスと言う女を知っているだろうか」
「ええ、元勇者パーティーの一人ですね。わたくしも、当時は彼女と仲良くさせて頂いていました」
レオの言葉に、ロト姉は少しだけ昔を懐かしむ様な、そんな表情を浮かべた。けれど、それはすぐに消えてしまう。
「その女の部下が三日前、私の屋敷に押し入って来ていてな。丁度私が不在のタイミングを狙った、下賤な連中だ」
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