呪われし焔

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 レオの話では、彼を慕う冒険者の女性が、その三日前に攫われてしまったらしい。人数は二人、どちらもレオ自身が目を掛ける程の実力を有していたのだとか。  つまりその攫った二人を、スルトの元へと連行するつもりなのだろう。そうなれば、奴の戦力は更に増強されることになる。人間に炎の鎖が刻まれるまでどの程度の時間が必要なのかは分からないが、一刻の猶予も無い状況であることに、相違は無い。 「そのアルナミアって名前の魔術師は、魔族なんですよね? 先生」 「ええ。彼女は勇者ユウトとほぼ時を同じくして、炎の鎖に身を焼かれています。無力化することは出来ても、彼女の命を奪うことは出来ないでしょう」  レオの話を聞き、そしてアリエッタは少しだけ考える素振りを見せてから、隣に座るロト姉へと疑問を投げかける。二人のやり取りを、残ったあたし達は見守った。 「……私とクラインが同行しても、足手纏いになってしまうのでは無いでしょうか、先生」 「魔族となったアニーの実力は計り知れません。……貴女とクラインを庇った状態であってもそうで無くても、今のわたくしが彼女を下せるかどうかは未知数です。……雫」  アリエッタの二の句に応え、返答の終わり際、ロト姉はあたしに声を掛ける。難しい表情を浮かべるロト姉の胸中は、今のあたしには窺い知れない。 「レオ様は貴女の退魔の力に期待しているご様子ですが、アニーの強さが分からない以上、貴女を同行させることは出来ません。わたくし一人で挑んだ方が、恐らく勝率は最も高いでしょう」
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