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それはつまり、あたしを戦力として数えることは出来ないと言う、実質的なロト姉からの戦力外通告だ。あたしの安全を想っての判断であることは分かる。けれど、彼女の強さは魔界に居た頃の全盛期と比べ、各段に落ちてしまっているのも事実。
言ってしまえば、ロト姉は死地へ向かうつもりなのだろう。寿命の残り少ない魔族が、不死の魔族を相手に戦えばどうなるかなんて、想像に難しくない。
「お前達の事情は知らないが、そこのメイド一人でアルナミアの屋敷へ向かうつもりなのだろうか?」
あたし達のやり取りを黙って見ていたレオが、ここで口を挟む。彼の言葉に、ロト姉は弱々しくも頷いた。
「……顔色が悪いぞ。体も震えている。加えて、貴女を慕う者も傍に居るのだ。最悪の事態に備え、私も同行するべきだろう」
「何と言われようと、あたしも行くわよ。ここでロト姉達だけを行かせて、それでもしものことがあったら……、あたしは、リースに顔向けなんて出来ない」
これはあたしの本心だ。本心をロト姉にぶつけ、彼女の返答を待つ。けれど、ロト姉の意志は揺るがない。
「……貴女はリースの半身とも呼べる存在です。対してわたくしは、リースが未来へ進む為の礎に過ぎません。どちらを切り捨てるべきか、考える必要など無いでしょう」
「何で……そんな言い方をするのよ」
「お願いします、どうか聞き分けて下さい」
「あのさロト姉、寝惚けたこと言ってんじゃ――」
「……雫っ!」
辛い問答を繰り返し、遂にはロト姉が怒気を露わにする。
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