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顔を俯かせてしまった彼女の口から、悲痛な叫びが零れた。アリエッタとクラインが、席を立ってロト姉の顔を心配そうに覗き込む。
「先生……」
「わたくしに残された時間は、もう五年と存在しません。それまでに雫とリースを再会させ、再び思い出作りの旅を……、そしてゆくゆくはカーツ様とメルネスティア様の元に、リースを辿り着かせることがわたくしの……最期の願いでした。ですがリースはスルトの手に落ち、今も過酷な時間を過ごしています」
すぅっ……と、ロト姉が一呼吸置く。
「もしもリースが炎の鎖に焼かれてしまったら、わたくしはリースのご両親に向ける顔が無くなってしまいます。けれど、今も尚苦しむ人々を放置してしまえば、それはリースの望むことでは無いでしょう」
ですから、と彼女は続けた。あたしも、アリエッタもクラインも、レオでさえ、ロト姉の抱いた覚悟に息を呑む。
「わたくしはアニーを止めて見せます。これは、彼女と同じくかつてユウトの仲間であった、あの頃のわたくしのけじめでもあるのです。……雫、もしわたくしが貴女の元へ戻らなかった時は……」
「戻らなかった時は……?」
覚悟を語る彼女の言葉は、まるで遺言の様にも聞こえた。
「この大陸から北の海へ渡り、そして辿り着いた先の孤島に存在する、今は朽ちているであろう遺跡へと向かって下さい。そこには、人間界から魔界の中心部――かつての大魔王の居城までを繋ぐ魔導門の一つがある筈です」
「それって……」
「じき、メルネスティア様がご復活なされます」
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