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永い時間、口付けは続く。やがて幾らかの時間が過ぎると、カーツはゆっくりと私の唇から自身の唇を離した。
「……おかえり、メル。本当に、本当に……」
「はい。メルは、貴方の為に戻って参りました」
正直な話、私はもう二度と彼の声を聞くことが出来ないのだと、そう覚悟していた。けれど、私には分かる。
「シィナが、私に命を与えてくれたのですね……」
蘇生魔法は、対象に命を吹き込む魔法だ。しかしその究極系――研究の終着点は、蘇生させたい者へ、自身の残る命の全てを捧げること。
私の妹が、私を生き返らせる為に自身の命を投げ打ったのだ。私の記憶の中に、彼女の記憶が流れ込んで来るのが分かる。
「ああ。……あいつは、最期まで俺達親子の為に動いてくれた。あいつだけじゃない、ロッティも、ヘカーテもだ」
「ロッティ……」
徐々に広がる記憶の中、そこにはロッティの最期が刻み込まれていた。元勇者パーティーの一人であるアルナミアと引き分け、互いに力を使い切った後、不死のアルナミアに命を奪われてしまった様だ。
ヘカーテは生きてはいるけれど、今も昏睡したまま。バアルと戦い、こちらもその両者の実力が拮抗、命からがら奴の居城から逃げ出すも、追手からの追撃を避け切れず、酷い重傷を負った様だ。
カーツだって万全では無い。右足を失い、膝から先は義足が取り付けられている。
そして私とカーツの娘である、ミラリーサは――
「……だが、リースの行方が分からないままだ。今もお前の昔の仲間達が、リースの捜索に力を入れてくれてはいるが……」
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