俺とメイドさん

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 絶対今の聞こえていただろと言う突っ込みはせず、僅かな殺気を放つメルを尻目に出口へと向かう。これ以上怒らせると危険が危ないからな、俺はまだ死にたくない。  行って来るぜと声を張って、俺は玄関の扉に手を掛ける。気を付けての、と返してくれるメルの声を背に受けながら、我が家の隣に建ててある納屋へと入って行く。 そこには鍛錬用の木剣があったり、金属製のナイフが仕舞われてあったり、そうかと思えば畑仕事に使う道具が立て掛けてあったり。平和な村には中々に不釣り合いな物までここには収納されていた。  比較的広めなここには、俺の目的の物も置いてある。それは囲いが取り付けられた台車だ。木製の引手が取り付けられており、ここに体を収めてこの引手を押して進むわけだな。  台車を駆り、俺は村の外へと向かう。途中おじさんやおばちゃん達と挨拶を交わしながら、穏やかな時間に身を委ねられる今に感謝の念を覚えていた。 このまま俺は、メルと一緒に生涯を過ごしていくのだろう。いずれ訪れるであろう人生の転機を乗り越えられれば、俺達を邪魔するものは何も無くなる。  そんな未来に想いを馳せながら、森の中を歩いていると。村人にしか気付けない、踏み固められた道の向こう側から誰かがやって来るのを目にする。 一人は、村に籍を置く聖職者、カードナー司祭。彼が連れているもう一人の方には見覚えが無い。
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