17人が本棚に入れています
本棚に追加
2
眩しい朝日に照らされてベッドの上で目を覚ました。
平日は仕事に行き、休日はサブスクリプションの動画を見て過ごす。
こんな平坦な日々が続いているのは、なんだかただ単に日々を泳いでいるみたいだ。
手元のスマートフォンを見て時間を確認した。だいぶ遅い朝になってしまったが、特に後悔はしていなかった。
そしてマッチングアプリを開く。
ここに登録したからには何か変わるかもしれないと思ったが、まったくそんなことはなかった。
画面をスクロールしても、そこには男性陣の顔写真がずらりと並んでいる。
......どの顔もどのプロフィールも、同じように見える。この中から結婚相手を見つけ出すなんて、まるで砂漠の中にあるオアシスみたいなものだと思う。
・・・
ビールを勢いよく喉に流し込んで飲んだ。
仕事終わりにジョッキを傾けるのが私の中で一日をリセットするルーチンみたいなものだ。少しの刺身とビールさえあれば私ひとりでいてもなんだか楽しい気がする。
マッチングアプリを登録してから数日、私はまだ嫌疑的だった。職場はもちろん、異性との出会いについて考えるのは難しかった。
そこに、ポロン!とスマートフォンの通知が鳴る。
青天の霹靂。
この言葉はこういう時に使うのだろうと実感する、その通知は絶対来ないであろうと思っていたマッチングアプリで相手からの<気になる>というものだったのだ。
「ええっ!」
私はひとりでいるのも忘れて、その場でひっくり返ったような声が出た。
それがユタカさんだったのだ。私よりひとつ上の年齢で、プロフィール写真は街中のビル群を歩く姿だ。
いざ気にしてくれる相手が現れるとなると、私なんかのためにという感想がぴったりだった。
これはどうするべきだろうか。
マッチングアプリを教えてくれた友人は、無理して<気になる>を返さないで良いよと語っていた。年齢や年収、結婚の価値観など相違の認識が合うか考えないといけない点が多いからだ。
「......なんだろう」
私は小さく口にした。なんだか不思議な感情がこみ上げた。この人なら、本当に結婚できるんじゃないだろうか。
プロフィール写真に吸い込まれるように、私も"気になる"のボタンをタップした。
私は浮かれた気持ちのまま会計を済ませた。
そこに、同僚の男性が入れ違いで来店していた。
......あれ、この人は飲み会に参加するのすら珍しいし何だろうか? まあいいいやとアップテンポの足取りで店のドアをくぐって帰宅した。
・・・
なんて伝えようか、なんて気持ちを文章に込めようか。
私はベッドの上でスマートフォンを眺めている。落ち着かなくて、色々と姿勢を変えてしまう。それに合わせて、頭の中がぐるぐると回っているみたいだ。
気になる相手とマッチングしたことから、メッセージや音声電話のやりとりができるようになった。ここからふたりの関係を紡いでいくんだ。
とはいえ、一通目の文章は何を書けばよいのか分からない。何も思いつかないまま、そのまま眠りについてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!