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1 綺麗な赤ずきん
むかしむかしあるところに、赤いずきんを被った赤ずきんと呼ばれる女の子達がいました。
お母さんは赤ずきん達に言いました。
「神聖な子以外、森に入ってはいけないよ。汚れた子が森に入ると、オオカミに食べられてしまうからね」
赤ずきん達はその言葉に肩を寄せ合って震え、話を聞いたその日から毎日毎日身も心も清め清潔で純粋な少女でいるように努めました。
10歳になると赤ずきん達は必ず森を超えた先の村にあるおばあちゃんの家へお母さんからお見舞いを頼まれます。
身も心も聖女そのものとなった赤ずきん達はもう恐れる事なく、自ら進んでおばあちゃんの家へ向かいオオカミに食べられる事もなくその後も幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。
「この話間違ってる」
2段ベッドの上で寝軽がる茶髪のロングの少女が不服そうに床に向かって本を投げ捨てた。その投げられた本を下のベッドにいた黒髪のボブの少女が見事にキャッチする。
「フォレッタ、物を大切に扱わない子は聖女じゃありませんよ」
フォレッタはシュンと落ち込んだ。
「聖女になったって、だって意味ないもん」
黒髪の少女は、梯子を登りフォレッタの元へ行き彼女の頭を優しく撫でた。
「そんな事ないです。いよいよ明日だから怖くなってしまうかもしれませんが……」
言葉を遮るかのように黒髪の少女の後頭部にどこからか枕が飛んできて命中した。
「まーた良い子ちゃんやってんねぇ~ラビットちゃん」
ラビットと呼ばれた黒髪の少女は頭をおさえながら枕を投げたであろう赤毛のツインテールの女の子をキッと眺んだ。
「ベリィ、残念ですがあなたは絶対にオオカミに食べられますね。それと私の名前はラビです」
ラビとベリィはまるで水と火のように正反対で相称が最悪だった。
ラビは今までの赤ずきん達をいれても3位までには入るだろうという程の優等生で、お母様やメイド達からも一目を置かれた存在だった。
一方でベリィは大問題児で、お母様にいつも怒られては、家の地下にある反省室に入れられて出てくる度「二度とあそこに戻りたくない」と言ってはまた問題を起こし反省室に入れられるどうしようもない子だ。
ラビはそんなベリィを理解不能な生き物だと思っていて、ベリィはラビを表では良い子のフリしたクソ野郎と思っている。
つまりお互い嫌い合っているのだ。
ベリィはよくラビの事を馬鹿にする時、「ラビットちゃん」といったか弱そうな動物に例えて呼ぶのだ。
ただ2人は嫌い合っているのかもしれないが、フォレッタや他の赤ずきんからしたらある意味仲が良さそうにしか見えなかった。
フォレッタはそんな2人の関係が羨ましかった。
フォレッタは他の子達と少しズレている思考の持ち主だった。
少さい頃、お母様が「白雪姫」というお話を読んでくれた時、他の赤ずきん達は皆「魔女怖い」「魔女消えちゃえ!」と口々に魔女へ侮蔑の言葉を投げかけたが、フォレッタだけは違った。
「魔女さん死んじゃうの可哀想」
ラビ以外の他の子達はそんなフォレッタを驚きと軽蔑の目で見た。
いつもフォレッタは他の子と違う変わった意見を言ってしまう為、皆と中々仲良く出来ないでいた。
でも今回は違う。
ラビも言葉で反論しても、心の中では皆と同じ意見だった。
「はっ! あたしがオオカミに食べられるって? 何言ってんだよ、ここにいる全員食われるんだよ! 今までの赤ずきんと同じようにな」
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