2 お母様は絶対

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2 お母様は絶対

「聖女であれば食べられません、お母様はちゃんとそうおっしゃっていました。お母様の言う事は絶対です」 ラビは投げられた枕をベリィに向かって投げ返した。 枕は見事ベリィの顔面に直撃し、それはそれはあまりにも見事なフォームだったのでフォレッタは思わずパチパチと手を叩いた。 その余計な拍手のせいでベリィはますます苛立ち、返ってきた枕で2段ベッドの柱を思いっきりぶっ叩いた。 「じゃあ、なんで誰も返って来ないんだよ! 何? 今までの奴ら全員、聖女じゃなくてあたし みたいな奴らだったから仕方ない、って言うのか? 違うだろ!」 怒りのあまり部屋に響き渡る程のベリイの大きな声にフォレッタはびっくりして飛び上がった。 そんなフォレッタをなだめるように彼女の背中をラビは優しくさすった。 「私が何を言うかもう見当がついているのなら、ここで言い争っても無駄である事も分かっているでしょう? そんなにお母様に不満があるのなら、どうぞあの扉から出てお母様ご本人に物申して下さい」 これにはさすがのベリィも黙る以外他なかった ベリィ程の大問題児であっても、お母様の意見を真っ向から否定し口答えをする気など一切起きなかった。 赤ずきん達の中での絶対的存在。 それが「お母様」だ。 赤ずきん達は幼い頃からずっとお母様と共に過ごし、育ってきた。 身の回りの世話はメイド達がしてくれているが、生きていく上で大切な事を教えてくれたり絵本を読んだりおやすみのキスをしてくれたりするのはお母様だった。 赤ずきん達は皆、そんなお母様がこの世で一番大好きだった だからこそベリィがケンカをふっかけてきたら、お母様の名をうまい事出せば良いとラビは心得ていた。 また今日もラビの勝利だなと部屋にいた他の赤ずきん達は日常茶飯事のケンカを軽く聞き流しながら、ままごとや読書を各々続けた。 「私がお母様に聞いてこようか?」 フォレッタの突拍子も無いその発言に誰もが手を止め、彼女を見た。 そんな皆をよそにごく普通のペースでベッドから降りてテクテクと扉に向かって歩いていくフォレッタをラビは慌てて引き戻そうとした。 「フォレッタ、聞くって何を聞きに行こうとしているの!?」 フォレッタはきょとんとした顔で周りを見渡した。 「え、ベリィが開けないみたいだから、お母様に『なんで今まで誰も森から返って来ないんですか?』って聞こうと……だって皆、気になってるでしょ? もう明日だよ」 いつも通りの空気の読めないフォレッタの行動にベリィはやれやれと頭を振った。 「これだから変てこちゃんは……」
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