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3 外には何があるの?
お母様は大好き、お母様は何でも教えてくれる、お母様は正しい、お母様は絶対。
でもお母様、なんだかその言葉が全て嘘かもしれなくて怖いの。
お母様、だから教えて? 「オオカミ」ってどんなもの? 「おばあちゃん」ってなぁに?
私たち、なんにも知らない。明日だというのになんにも知らない。
皆が言うの。ラビさえも言うの。
そんな事、聞いちゃいけない。お母様に質問をして、大好きなお母様を困らせちゃいけない。必要なことは何でも教えてくれる。教えてくれないって事は知る必要が無いという事。本棚の本に情報が載っていないのなら、大した事では無いという事。
だからね、フォレッタ。余計なことはしないで。
お母様は絶対だから。
ねえ、お母様。それって本当に正しいこと?
フォレッタはおかしい、フォレッタは変わり者……正しいお母様じゃない私は間違いなの?
だったら他の皆も間違いね。だってお母様じゃないもの。
ねえ、お母様。私、聞きたい事、知りたい事、いっぱいある。
この家の外には何があるの? 外と家の違いってなぁに?
森ってどんなところ? 家族ってどういうもの?
ねえ、お母様。お母様ってなぁに? 名前じゃないってどういうこと?
知らないことってとっても怖いことなの。
どうして誰も知ろうとしないんだろう。
フォレッタは、ベッドの上でそんな事を1人考えていた。
ラビに止められ、フォレッタはまたいつも通りお母様に質問しに行けず、拗ねていた。
ベッドに寝軽がりながら、横目で呑気に遊んでいる他の赤ずきん達をチラッと見た。
本当は皆、明日どうせ自分は「オオカミ」という見た目も何も分からない物体に食べられ生きて帰ってこれないと気付いている。
気付いているのに、気付かないフリをしている。
怖くてたまらないくせに、私は何も知りませんよという顔で遊んでいる。
まるで、真実を知れば聖女では無くなるというかのように。
本当は、赤ずきん達にとって聖女であるかどうかなんてどうでも良かった。
それを気にしているのは、お母様やメイド達の方だ。
だからこそ、赤ずきん達は聖女であろうとした。
ただただ、お母様に愛されたいが為、死よりも恐れたのは愛されない事。
ベリィやフォレッタのような例外もいたが、それでもその想い自体は一緒だった。
ベリィは、お母様に注目してもらいたいからああいう目立ついたずらや嫌がらせをするのよ、とラビは以前クスクス笑いながらフォレッタにそう話した。
それをたまたま聞いてしまったベリィは、名前の通り真っ赤なベリーのような顔色をして何も言わず走り去っていったのでおそらく図星だったのだろう。
フォレッタはというと、何も考え無しだった。
ただ自分の感じたままに行動する。彼女はそういう性格なのだ。
だが、そんな者は聖女であるべき赤ずきんには必要が無い。
言われた事だけしていれば良い、外れた道に行く事を許さない。
フォレッタは時々、そんな毎日が嫌になりどこか遠くへ行きたくて仕方が無くなる時がある。
でもここにはお母様がいる。ここにしかいないのだ。
フォレッタは溜息をつきながら、大きく寝返りをうった。
と、同時に扉がギィと開く音がし、赤ずきんの誰かがこう叫んだ。
「あ、お母様!」
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