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出会いと一目惚れ
鎧姿で剣を腰に下げている若者はひとり言を述べた。
「……んーー、ここか? 酒場のマスターが言ってた、モンスター貸してくれる店ってやつは?」
「……うん、そう……だな」
看板をじっと見ている若者はつぶやいた。
「……よし、まずは行ってみっか……」
彼は店内へと足を踏み入れてみることにした。
「あのーーー……すんませーーん……」
ドアから入ってきた若い男が声を出すと、瞳が紅赤に輝く女が顔を上げた。
……はぅ!!!???
その瞬間、女は心身に大きな衝撃を受けた。
「!!!! …………は……はいぃ。い、いらっしゃい、ませぇ……」
平静を装おうとする黒いスーツ姿の女は男よりも少しだけ、年上に見える。
若い男「あの……ここの……店員さん、ですか?」
「ぇ……ええ、そそそっそう、です……」
……ドンドンドンドン、と胸が高鳴る女は椅子から腰を上げ、無理に微笑んだ。
若い男「あ……オレ、冒険の初心者なんすけど……ここって、モンスター……レンタル……ショップ……で……いいんすよね?」
「はいぃ、おっおっしゃる通りです。……お客さんは、こ、この街へ来たばかり……で、しょうか?」
胸がドキドキする女は、相手のことを何でも知りたいと感じた。
若い男「そうそう。……この街の近くにゴエティア洞窟って、あるじゃないっすか。手始めにそこに潜ってみたいなーって思ってまして……でも、オレひとりじゃ、あぶねぇなーと……。けど、仲間もまだいねーし……。そんで、この店のモンスターでも、一匹レンタルして洞窟に行ってみよっかなーっと、思いまして……」
「……はい、はい。……わ、わかりました」
女はうんうん、とうなずいた。
若い男「オレ、昨日、ここの街……テウルギア……に着いたんです」
「そ……そうですか、そうですか。……ゴエティア洞窟は、えーと、お客さんのような方に……ピッタリの場所ですよ」
彼から情報を明かしてくれたため、女は嬉しかった。
若い男「あ、ピッタリなんすか?」
「はい。よく、この店にも……旅を始めたばかりの方が訪れます。この街は……その、こ、古来からの交易路に面してまして……宿屋が……多いでしょう。腕試しに、ゴエティア洞窟へ潜る方も多いのです……」
自らの内部で何かが目覚めてしまった女は、彼ともっと会話したくなってきた。
若い男「ふーん、そっかーー。……あの、オレ、モンスターって、レンタルしたことねーんで……なんか、こう……店員さんのオススメのヤツ、教えてくんないっすかね?」
「はッ……はい。……ぇ……えーー、では……アックスドラゴンなんて、どうでしょう?」
相手に望まれた女は喜び、提案した。
若い男「アックスドラゴン?? ……強そうだなー」
「武器の扱いが……得意な人型竜族でして……特に両手で握って使う斧が、得意なんです。……だから、アックスドラゴンって……名付けられました。我々の言葉……人語も解せます。あの洞窟に出現するモンスター相手なら、ほとんど一撃か二撃でぇ……倒せるでしょう。で、でしゅので……ぼ、冒険の序盤には強力な助っ人となるはずです!」
女は……落ち着いて、落ち着いて、と自らへ言い聞かせ、説明を行った。
若い男「……いいね〜〜。……んじゃ、それで……」
「では……つ、連れてきます。……アックスドラゴン……なら、ガイーシャ君がいたかなぁ……?」
相手の瞳に吸い込まれそうになる女は、目を伏せてちょっと考えた。
若い男「ん……? ガイーシャくん?? ……ドラゴンにも名前って、あんの?」
「あっあります。それぞれに名前があって、性格も異なります。わわ我々、ぃぃいえ、いえ、人間と同じなんですよぉ、お客さん……」
彼と話すたび、女の内部で細波が起こる。
若い男「……へぇーーー。あ、オレはライトってんだ。オレの名前ね」
「!! わ、わっかりました、ライトさん。いま、アックスドラゴンをを……ここへっ、連れてまいりまっす!」
気になる相手の名前を知った女は笑った。
ライト、と名乗った若者「おう! お願いしまっす」
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