第1章 お見合い相手は同業者!? その場で結婚決まりですか?

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 目の前には、海。ゆらりと波打つ水面を見つめつつ、私は「はぁ」とため息をつく。 「お嬢。そんな暗い表情しないでくださいよ」  私の肩を軽くたたくのは、私の世話役を務めている男、衣川(きぬがわ) 湊介(そうすけ)だ。年齢は二十七。私よりも六つ年上で、私にとっては頼れる兄貴分的な存在の一人。 「大体、ご友人の結婚式の帰りに、なに暗い表情してるんすか」  そう。今日は、私の高校時代の友人の結婚式だった。 (ずっと、私と一緒だったじゃない……)  彼女も恋愛感情がわからなくて、恋をしたこともなくて。なのに、知り合いの伝手で知り合った男性とあっさりと結婚した。  ……妬ましいとか、そういうことじゃない。ただ、なんだか私だけ置いて行かれた感が否めないだけ。 「……ねぇ、湊介」 「はい」 「私、結婚できると思う?」  ちらりと湊介を見てそう声をかける。すると、湊介の顔が見る見るうちに蒼くなった。  なにか、重大な勘違いをされているような気がする。 「お、お嬢、結婚したいようなお相手が出来たんですかい!?」  湊介が私の肩を掴んでグラグラと揺らす。……そういう意味じゃないのに。 「あぁ、頭や先代にはなんて報告すりゃあいいんですかい!?」 「ち、違う、違うからっ!」  力いっぱい揺らされて、私の頭がくらくらする。……湊介は思い込みが激しい。一度思い込んだら、そのまま一直線。  そりゃあ、勘違いされそうなことを言った私も悪いけれど……。
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