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目の前には、海。ゆらりと波打つ水面を見つめつつ、私は「はぁ」とため息をつく。
「お嬢。そんな暗い表情しないでくださいよ」
私の肩を軽くたたくのは、私の世話役を務めている男、衣川 湊介だ。年齢は二十七。私よりも六つ年上で、私にとっては頼れる兄貴分的な存在の一人。
「大体、ご友人の結婚式の帰りに、なに暗い表情してるんすか」
そう。今日は、私の高校時代の友人の結婚式だった。
(ずっと、私と一緒だったじゃない……)
彼女も恋愛感情がわからなくて、恋をしたこともなくて。なのに、知り合いの伝手で知り合った男性とあっさりと結婚した。
……妬ましいとか、そういうことじゃない。ただ、なんだか私だけ置いて行かれた感が否めないだけ。
「……ねぇ、湊介」
「はい」
「私、結婚できると思う?」
ちらりと湊介を見てそう声をかける。すると、湊介の顔が見る見るうちに蒼くなった。
なにか、重大な勘違いをされているような気がする。
「お、お嬢、結婚したいようなお相手が出来たんですかい!?」
湊介が私の肩を掴んでグラグラと揺らす。……そういう意味じゃないのに。
「あぁ、頭や先代にはなんて報告すりゃあいいんですかい!?」
「ち、違う、違うからっ!」
力いっぱい揺らされて、私の頭がくらくらする。……湊介は思い込みが激しい。一度思い込んだら、そのまま一直線。
そりゃあ、勘違いされそうなことを言った私も悪いけれど……。
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