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「違うのよ! ほら、なんていうか、奈緒って、私と一緒だったじゃん、ずっと……」
湊介の手を振り払って、私はまた海に視線を向けた。
……オレンジ色の夕日がとてもきれいだ。……二次会、断って正解だったかも。
「なのに、なんていうか、私を置いて大人になったなぁって、思ってしみじみしただけ」
恋愛感情も分からない。初恋もまだ。恋愛経験値はゼロで、小学生以下。奈緒も、私と一緒だった。……高校時代は。
「まぁ、私は結婚しなくても、適当に生きていくからいいんだけれどさ……」
生まれから、まともな結婚は出来ないとわかっていた。だから、結婚願望は薄いほう。
でも、今後きっと。
(今後、友人の結婚式に参列するたびに、こんな気持ちを抱くのかな……)
そう思ったら、なんだか惨めだ。
「……湊介」
「はい!」
「帰るわよ。車出して」
だけど、いつまでも落ち込んではいられない。……奈緒は私の親友の一人。結婚を祝福しなくちゃ。
そう思いつつ、私は黒塗り高級車の後部座席に乗り込む。運転席には、湊介。
「じゃあ、屋敷に向かいますね!」
「えぇ」
端的に返事をして、流れる景色を見つめた。
羽賀 すみれ。年齢は二十一。……今日、友人が結婚しました。
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