81人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
エイミーの弁に、クレフティスは曖昧な笑みを浮かべた。
たしかに自分の婚約者を「怖い」と称する意見に同意はできないだろう。
「ところで本当のお相手は?」
「相手?」
「婚約破棄を告げるからには、いわゆる『真実の愛のお相手』がいらっしゃるんですよね。威圧されて近くにいたわたしをうっかり紹介してしまって大丈夫なんですか?」
「ああ、そのことなら問題はないよ。そんな相手はいないから」
「え?」
いないのなら、なぜ婚約破棄を?
頭に疑問符を浮かべるエイミーに、クレフティスは苦笑して事情を説明してくれたが、それは想像していたものとは少々異なっていた。
さきほどのご令嬢はショーン侯爵家のアマンダ。幼いころから社交界に顔を出していた、十七歳にしては大人びた顔つきの貴族令嬢だ。
ショーン侯爵家はライバルである別の侯爵家と競い合っており、とにかく相手の上をいくことに執念を燃やしている。アマンダもまたそういった親の影響を色濃く受けており、自身の婚約者へも高いステータスの人物を求めた。
そうして彼女が見出したのが、クレフティスであったらしい。
最初のコメントを投稿しよう!