01 婚約破棄の理由

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 クレフティスはその容姿も相まって、あまり表には出てこない少年時代を過ごした。両親も幼い子どもを悪意に晒すことを避けていたため、籠りがちなクレフティスに無理を強いることはなく、必要最低限の交流のみで暮らしてきた。  そんな生い立ちでも公爵子息、さらには第一王子のランベール殿下の乳兄弟という立ち位置は、アマンダにとって大きな魅力になった。見た目がおかしいぐらい、些細なこと。  侯爵家からの申し出に、クレフティスの祖父母は難色を示したが、両親は了承した。この先、自身の息子にこういった縁が発生するかわからないと考えたのだろう。  貴族の子として、クレフティスもまた婚約を受け入れる。「そういうものだ」と思ったし、変わった見た目をしている自分に声をかけてくれた感謝も少なからずあったこともたしかだ。  以来、それなりの対応はしてきた。婚約者に対する振る舞いとして、常識に外れたことはしていないと思うし、相手から不満をぶつけられたことはなかった。  学院を卒業すれば、そのまま婚姻を結ぶことになるのだろうと考えていたが、ここで転機が訪れた。  第二王子ベルナールがアマンダに懸想したのだ。
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