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01 婚約破棄の理由
「アマンダ嬢、貴女との婚約は破棄させていただきたい」
「クレフティス様、それはどういう意味ですか?」
「どういうもなにも、そのままの意味です」
「それはつまり、わたくしを差し置いて、懇意になった女性がいらっしゃるということですね。どこのどなたですか」
通りすがりにそんな言葉を聞いてしまったエイミー・サンソンは、さすが王都の有名学院は刺激的だなあと思った。
田舎育ちで、高等学院へ入学するために都へ来て半年ばかり。話に聞く社交界は、末端の男爵令嬢には物語じみているが、今回のそれは流行の最先端といってもいいだろう。
学院の裏庭、無観客。
そんな場所で、若者向けの大衆演劇に描かれる婚約破棄物語が現実となって目の前で展開されるだなんて、都へ来た甲斐があったというものだ。
しかしそれらは「観る」ものであって、婚約者のいない自分には縁がないシロモノ。そのはずなのに。
「彼女です」
「へあ!?」
いきなり腕を取られ表舞台に引き出されたエイミーは、女優とは程遠い、へなちょこな悲鳴をあげた。
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