前進と足踏み

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シアターやバー、スパやカジノ… “クルーズ中はドレスアップが必要だけど、停泊ツアーは大丈夫だって” 「そうですか…ドレスアップにも縁がないけれど、カジノとかって無縁…大丈夫かな?」 “無縁のことにチャレンジするのも良し。ただ海を眺めているのも良し。気ままな休日でいいんじゃない?” そうかもね… “茉優さんを迎えに行きたいんだけど、帰りが運転出来そうにないんだよね” 「お酒も楽しめそうですからね」 焼き肉の時には二人とも飲んでないけど、お互いに飲める人だという会話をした。 “タクシーで迎えに行くよ” 「わざわざそれは…遠慮します」 “じゃあ…今回はそういうことでいいか…あっちの最寄り駅、分かる?あとで送るよ” 「はい、分かります」 私はそこで唇を濡らす程度、マグカップに口をつけた。 “10時半ごろ駅に着く感じでいいかな?” 「大丈夫です」 “ありがとう。楽しみにしてる” 「私も…初めての場所ですし」 “また俺の言葉が足りなかったな…茉優さんと会うのが楽しみ。楽しみにしてる” ヒュッ…と息を飲み込んでしまうような彩りの音だった。息を飲み込んで構えないと体の隅々まで痺れそうな音。
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