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新しい入居者
「明日の10時くらいに来るんだよね、新しい人」
「うん」
そういうメールが管理事業者からきていたな。
「茉優ちゃん、いるの?ボク仕事」
私、迫田茉優に聞くのは、シェアメイトの一人、神田健人。
「週末だもんね。うーん…私も出ようかな。あーそれも失礼だよね。晃司くんは?」
「茉優と同じ思考」
「自分の言葉で言わないところが晃司くんのズルさだよね」
「茉優ちゃん、分かってきたね」
もうぬるくなった珈琲をズッと熱そうに飲む健人くんに“でしょ?”と言いながら私はマグカップを空にした。
真中晃司29歳と神田健人23歳は、このシェアハウスの先住民で、私は1ヶ月ちょっと前に入居した新参者。ちなみに28歳。
「誰もいないのはやっぱり失礼だから、晃司くんも居てよ」
「一人で居るのは面倒だけど、茉優が居るなら一応出迎える」
私がズルいと言ったからか、晃司くんは一人で対応する面倒さを隠さず、でも誰もいない失礼さも理解していると言葉にした。
仲良くしたいから挨拶はしたい。でも管理事業者からの文面だけで分かりづらいルールは説明する必要があるだろうから面倒だとほんのちょっぴり思うのだ。
「でも茉優が話せよ?俺、10以上も年下の女と言葉が通じない」
「あっ、そういうこと言うんだ、晃司くんは。私も10歳年上になるんだけど?」
「女という共通点はあるだろ?」
明日、小城早智18歳が入居してくる。
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