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「茉優ちゃん、何か作ってるの?」
「チェリーを洗ってくれてる。これ、適当に開けてどうぞ」
「ありがとうございます」
がさがさ…わぁ…おぉ…あぁ…いぃ…おつまみで盛り上がっている皆まであと二歩というところで
「で、晃司くんは何処が赴任先候補?」
唱さんがゆったりと聞いてから、私に“おいで”と手招きした。
「お話の途中で悪いんだけど…」
私は何となくチェリーのお皿を早智さんに手渡しながら座ると
「私はここを出て行くとは、誰にも、一言も言ったことないよ。これからのことは当然分からないけれど、今そんなことは全く考えてないの」
と皆に伝える。
「あははっ、ホントそうだよね、茉優ちゃん。晃司く〜ん…あぁ…うん…そういうところかな…」
健人くんの後半部分はイマイチ分からない。でもすぐに反応したのは早智さんだった。
「そういうところかぁ…言葉って難しいね」
「難しいけれど考えてばかりいなくてもいいと思うよ」
「パパにしては分かりにくい説明だね」
「考えてばかりいなくてもいい。自然に出る言葉で性格や生活が表現されて、どこまで気の合う人か、どこまでの付き合いにしておく相手か分かってくるよ」
「40くらいまでにはね」
早智さんはやっぱり唱さんの娘だ。
「茉優?どうかした?」
「ふふっ…早智さんの受け止め方に20年以上の余裕があるのがいいなって思っただけ」
「俺の娘だからね」
「大切に育てたね」
「そうだね」
「ああああぁぁぁ…早智ちゃんを褒めてるのに二人がイチャイチャ見えるってっ」
小さく叫ぶ健人くんの隣で、晃司くんは新しいボトルを開けた。
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