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ムニュ…ヌルッとスマホが頬に当たったので呼吸を始めると
「…はい…じゃあ明日…」
プツッ…ファンデのついた画面をタップして通話を終えた。そして暗くなった画面を短パンでゴシゴシと拭きながら、体温まで冷めた黒豆茶をコクコクと飲み干す。
人の好意、優しい言葉、甘い誘惑…気分の悪くなる人はいないだろう。誰しもが気分が上がって当然だと思うけれど、バタン…早智さんの部屋のドアが音を立てて、小城さんはパパなのだと思い直す。
誘ってくれる人が“パパ”という名札をぶら下げた人だから戸惑っているのか、年が離れているから戸惑っているのか自分でも分からない。でも頭で考えて正解の出せる事柄ではないということは理解できる。
「っ…ん…っ…」
体が裂けんばかりの大きな伸びをした私は、スマホを放置してマグカップだけを持って部屋を出た。おにぎりとケチャップライスを冷凍庫に入れなくちゃ。
下ではすっかり寛いだ様子の晃司くんがテレビをつけてスマホを弄っている。それぞれの過ごし方なのでイチイチ声を掛けることはない。が…
「茉優」
私がキッチンに入ると、すぐに晃司くんが立ち上がってキッチンへ来た。
「うん?」
「さっきの…」
「ただいま〜忙しかったぁ…」
晃司くんはさっきのカフェの話がまだしたかったのかもしれないけれど、土曜日の勤務を終えた健人くんの声が大きく響く。
「わぁ、茉優ちゃん。一生のお願いっ。そのおにぎりでもケチャップライスでもいいから恵んで下さいっ。缶チューハイを今度冷蔵庫にプレゼントしておくから…今日はもう無理…」
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