七夕

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七夕

 俺には、人には言えない特殊能力がある。  他の人には見えないものが見えるのだ。  例えば、幽霊や妖怪などといったもの。  本日は七夕。  雨雲があるが、今の段階ではまだ星が少し見え隠れしている。  俺は、見てしまった。 「彦星さま! 会いたかったわ!」 「織姫どの! 今宵は楽しみましょうぞ!」 「愛しています、彦星さま……!」 「私も愛しく君を思うぞ、織姫どの……!」  俺は、七夕が嫌いだ。  他の人は、彦星と織姫が会えればいいね、とか、年に一度しか会えなくてロマンチックよね、などと言うが、これを毎年、夜空を見上げると見せられる身にもなってくれ。  雲に隠れると、声も遠退く。  雨が降れば、声もかき消される。  早く雨が降ってくれないかな。  俺はそう願った。  運命の二人のロマンチックな夜。  瞬く天の川のその先で、二人の愛の劇場が、今年も始まりをむかえていた。  運命の二人、ね……。  俺は夜空から目をそらし、地面へと視線をかえた。かえてやった。  あんなおおっぴろげて愛するのは恥ずかしいけれど、俺にもあんな運命の人がどこかにいるのだろうか、そんなことを考えながら家路を辿った。
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