終章 幸せをもう一度

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「これ、アンが作ったの。すごい」 「今日のために腕によりをかけて作ったの。デザインも布選びも、縫製も一人でやったから自信がついたわ。店長にも褒められて仕事も増えたのよ。休む暇がないくらい注文が入ってるの。そのうち独立できたらなって」  どんなことをしたらこれほど複雑で精密なデザインが作れるのか、エルマには検討もつかなかった。それぞれ得意なことがあるのだろう。 「今日はなるべく町をゆっくりこのドレスで歩いて。みんなうらやましくなると思うの。店の宣伝をする代わりに布を安くわけてもらったし、元を取らなくちゃ」  商魂たくましいアンを尊敬の目で見る。    支度が終わった頃、母のクラウディアもやってきた。一瞬目を細めてから、そばに来てエルマの手を取った。 「子どもの時の思い出しかないから、急に大人になって戸惑うわ。とてもきれい。私の若い頃そっくりだわ」  さりげなく自画自賛を混ぜた母だったが、その目には涙が滲んでいた。 「母さん、お願いがある」 「今日はおめでたい日だもの。なんだって聞くわ」  エルマが小声で母に囁いた。 「私は怒ってなどいないと、今度母さんからあの人に伝えて」
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