終章 幸せをもう一度

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 クラウディアは、一瞬目を見開いて、そして静かに微笑んだ。許せないものは少ないほうが、きっと誰にとってもいい。  長い歳月は二人を隔てたかもしれないが、少なくとも憎む必要はない。わだかまりをもったまま生きるには、人生は短すぎるのだ。  レオンがエルマに気を使って、あまり多くの人を呼ぶことはしなかったが、食べ物や飲み物は豪華だった。  色とりどりの野菜が添えられた鶏の丸焼きや、ハーブを使ったソーセージにサラダ。そしてシャンパンやワイン。 「今夜は貸し切りだから、いくらでも飲んでくれ」  レオンが行きつけだという店の店主が、腕によりをかけたというごちそうは、おいしかった。  身内だけのささやかな宴だったが、皆歌ったり踊ったりにこやかに楽しんでいた。  レオンの部下だというハンネスが、ワインを注ぎにやってきた。 「おめでとうございます。これで隊長がようやく落ち着きます」  色々自分や母を探すのに協力してくれたというのは聞いていた。 「ありがとう」
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