193人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「エルマさんがいない間、東奔西走して大変だったんですよ。早く見つけないと、狂ってしまわないかと心配してましたよ。悲愴な顔を見せてあげたかった」
レオンの顔を見ると気まずそうにうつむいて無言を貫いていた。
「私がいなくてそんなに辛かったのか」
「ま、そりゃな」
注がれたワインを一気飲みして、レオンはむすっとしていた。
宴の間、ハンネスはアンにひっきりなしに話しかけていた。
「ハンネスは、アンが好きなの」
「さあ。もう二人とも大人だから放っておく、なるようになるさ」
「アンは鈍感そうだから」
「エルマが言うか。それを」
「私は成長した」
「まぁ、そういうことにしておく」
今夜はなんだか世界のすべてが明るく華やいで見える。
「おい、なんかへらへらして様子が変だぞ」
「シャンパンを飲んだ。おいしかった」
初めて飲んだ酒は思いのほかおいしくて、おまけに気分がとても良くなった。
帰り道、レオンに支えられ馬車に乗る。もう辺りは真っ暗だ。
「楽しかった。好き。ずっと一緒にいたい」
あまり普段こういうことを言わないせいか、レオンも一瞬驚いた顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!