悲嘆の王妃と神託の騎士

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 騎士に手を引かれ、娘は城下へと向かった。城下町へ足を踏み入れるのは初めてだった。身分を隠さねばならなかったからだ。しかし今やその必要はない。  人々の集う広場を抜け城門へ辿り着くと、騎士は声を張り上げた。 「姫様だ。この王妃様によく似た相貌を御覧(ごろう)じろ。疑いようもなく、王の正統なる後継者である」  門番は門を開けた。騎士がかつての同僚だと認めたためもある。一介の門番が一国の主人である王妃と言葉を交わすことはない。だが目の前の娘はあまりにも、かつて垣間見た王妃によく似ていた。
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