罵力

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罵力

裏窟はメガネを軽く触った後、自分を見下ろす対戦相手を指差し、こう宣言する。 「キミ、さっきは随分小うるさく騒いでくれたね。  だから、キミと同じ罵倒で倒してあげよう」 「なんだと、このやろう!」 「『罵力』を知らないキミには丁度良いハンデだからな・・『裏論武装』!」  裏窟が叫んだ瞬間、彼の体を突然、銀の鎧が纏っていく。全身を直ぐに銀の鎧が包みこんでいき、その鎧の胸の部分には「ペンは剣より強し」という言葉が傷のように刻まれている。  その姿を見た沢愚は驚きを隠せない。 「な、なんだその姿は・・!?」 「ふん、大声だけで戦うキミなんかに説明したって、理解できないだろうさ・・。  さて、行くぞ」  裏窟はいつの間にか手にした片手剣を沢愚の首元に向けた後、静かに告げる。 「バカ」  その瞬間剣先から『バカ』という言葉が青い塊となって飛び出していき、沢愚の腹部に直撃する。 「ぐわっ!?」 「アホ、まぬけ」  腹部に直撃し、よろめく沢愚に裏窟は更に言葉の塊をぶつけていく。    「アホ」は肩に当たり、「まぬけ」は両足に当たったその衝撃だけで沢愚はひっくり返ってしまった。  背中を地につけられ、立ち上がろうとする沢愚。  その彼の頭上には既に、今までより大きな言葉の塊が降り注いでいた。 「お前の母ちゃん、でぇべそ」 「グワアアアアアアアアアアアア!!」  沢愚はバラバラになった言葉の塊に飲み込まれてしまい、気を失ってしまう。  それを見た審判は旗を振り、司会者は叫ぶ。 『ショーーーブありーー!!  勝者、『ベン・裏窟』!!  流石、『罵力』の使い手だ、一回りもあるでかぶつがこんな簡単に倒されてしまったーーー!!』 「楽勝、だったな」  そうして余裕の表情で試合会場から降りていく裏窟を、丈二はテレビ越しにまっすぐ睨んでいた。  その時、彼の控え室の扉ががチャリと開き、女性が入ってくる。 「丈二、入るよー!」 「・・プライ、か」
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