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祖父に夜遊びを叱責され家出をした七緒は、男の運転するバイクの後ろに乗っていて事故に遭った。バイクは大破、男も七緒も原形はとどめていなかったという。
臓物が見えるようになったのは、七緒が死んだ時期と一致する。
壊れ物を扱うように、そっと七緒の臓物に掌を重ねてみる。もう血は通っていない筈なのに七緒の肌はほんのりと温かく、どこか懐かしい感情を呼び起こさせた。
「痛いか?」
「ううん、くすぐったいよ」
細腰を片手で抱くようにし、見上げる七緒の唇に自分のそれを合わせた。
七緒の舌は、昔教えた通りに僕の舌を迎えに来た。僕よりもまだ小さい舌先を懸命に絡ませてくる。七緒の毒は、甘くて重たい。
「可愛いよ七緒」
「祐兄、もっと触って」
言われるがままに小さく控えめな胸の尖りへ指先を伸ばす。ひっ掻くように弾けば、ふるりと身体を震わせた。
一線を越えれば、七緒の心は救われるだろうか。僕はずっと臓物の見えるままで良いから、七緒だけは救い出してやりたい。
七緒は、僕と出掛けた最後の夏祭りから抜け出せないままでいるのだ。
「ね、祐兄……」
「うん?」
「今日は、僕と全部してくれるの?」
「ああ。ずっとこうしたかった。七緒とこうなりたかったんだよ」
七緒から全ての布を剥ぎ取り、僕も全裸になった。
「大好きだよ、七緒」
「嬉しい。僕もずっとずっと大好きだったよ」
「知っているよ」
知っている。可哀そうで可愛い七緒にそう刷り込んだのは僕自身だから。
けれど七緒の愛は、溶けきらない砂糖のように甘く重たく沈殿していき、息が詰まりそうなほどだった。
あのまま僕は、七緒と共に沈んでしまえば良かった。どこの誰かも分からない男と死なせるくらいなら、僕が七緒と心中すれば良かったのだ。
けれどあの頃の僕には、そんな勇気などなかった。
口づけに少しずつ情欲を混ぜてやれば、七緒は嬉しそうにもっとと舌を突き出す。
「へえ、そんなことも出来るようになったんだ」
腹が立つ。僕は突き出した七緒の舌に歯を立ててやった。
「っ……う、ああ、ごめんなさい、ごめんなさい」
僕の加虐心に火を付けようというのか。七緒は痛みに身を震わせて喜んだ。
「祐兄、ゆるして」
赦しを乞いながら、七緒は微笑む。赦しを乞うのは僕の方なのに、それをさせないという一番酷い復讐を、七緒は僕に仕掛けている。
「七緒、口に入れてごらんこれを」
僕は七緒の後頭部を掴み僕の足元へ跪かせた。屹立したものを、その口へ押し込む。
「動かして」
「……ん」
七緒が控えめに頭を前後し始めた。七緒の口の中に性的な快感は期待していなかった。
けれど七緒は、次第に唇をすぼめて先端を吸い上げたり、舌を巧みに使って全体を舐めたり、ところどころで僕の顔色を伺うように上目遣いまで入れてくる。
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