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それはバイクの男に教わったのか。こうやってしゃぶれと男に言われて覚えたのか。死んでもまだ習慣が染み付いているのか。初心な風を装いやがって、くそ。
七緒のせいで、僕は気がおかしくなったというのに。いや違う、ごめん七緒。僕のせいで七緒は死んだ。いいや、七緒が僕の前に現れなければ良かったんだ。だめだ、七緒は僕の可愛い──。
ぐるぐると七緒に対する思いがこみ上げ、吐き気を催す。いっそのこと、思い切り七緒の中に吐き出してしまいたい。
「硬くなったやつ、どうして欲しい? 七緒」
「……入れて欲しい」
「そう。それなら、仰向けになって自分で脚を広げて」
「脚を……」
「欲しいんだろう?」
「うん……欲しい。広げるから入れて? 祐兄」
七緒の口から言わせるなんて、卑怯だと思う。けれど七緒は微笑みを浮かべ、望み通りの言葉を口にするのだ。
なんて可愛らしくなんて可哀そうなんだろう。僕の七緒。
七緒は畳の上へ仰向けになり、ゆっくりと両脚を持ち上げた。まるで道端で干乾びた蛙のようだ。こんな滑稽なことなどあるだろうか。
僕を大好きだと言う七緒に、なんて酷いことをしようとしているのだろう。
「入れるよ」
声を掛け、あわいに腰を沈めた。そこは僕の知らない男のもので慣れているのか痛そうな素振りはなく、大きく口を開けて僕をのみ込んでいった。
「七緒」
瞑っていた目をゆっくりと開けた七緒は、のみ込んだ部分に指を伸ばして繋がっていることを確かめた。
「入ってる、祐兄の」
「大丈夫?」
「大丈夫。嬉しい」
手足を僕の体に絡ませると、七緒は僕の耳元で言った。
「祐兄の好きなように、動いていいよ」
七緒の表情は、菩薩のように優しかった。どれだけ酷くしても、きっと優しく受け入れてくれるのだろう。
奥の蕾を開かれ、腸壁を引きずり出すように抉られ、欲望のままに肉を打ち付けられ、それでも七緒は嬉しそうに僕を見上げる。
胸が痛くなるほど恋しい。この世で一番美しい臓物、それが七緒だった。
「ゆ、に……、入れて、ね、奥まで」
請われるままに臓物を潰していけば、僕を迎え入れるように最奥の扉がゆっくりと開く。
「ここ?」
「ん、そこ。ね、それ、もっと」
僕の首に手を回して、自ら奥へと引き入れようとする。
菩薩じゃなくて死神かもしれない。それでもいい。七緒に魂を食われるのなら望むところだ。きっとそれで七緒は救われて、僕も救われる。
「僕は祐兄のものだから、好きにしていいの」
そう言いながら好きにしているのは、七緒の方だった。
七緒の身体の中は果てがなく、僕を閉じ込めて二度と外へ出さないつもりなのかもしれない。
僕は七緒のものになった。七緒に取り込まれて七緒の臓物を啜って生きていくのだ。
こうなりたかったんだ、ずっと。
「ゆうに、好き、好きなの、大好き」
「僕も大好きだ、七緒。出したい、中に」
「うん、出して」
苛立ちと憎しみと、哀れみ。そして愛しさと毒。それらを全部、七緒の中に吐き出した。
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