出生のヒミツ

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 6年間の交際期間を経て、ふたりはめでたく結婚の運びとなった。この時代の結婚式といえば、新郎新婦が主役であることに変わりはないものの、それでも、“家対家”、“一族対一族”といった雰囲気が色濃く残っていた。挙式や披露宴の会場には、本人たちからすれば、はじめてお目にかかるような、“親戚のオジサン、オバサン”の姿が数多く見られたものだ。   披露宴は、職場の同僚、幼馴染み、親戚のオジサン・オバサンが、次々と、さまざまな余興を披露していた。やがて、余興の時間も終盤に差し掛かり、ほとんど誰も見ていないと思われる様相になっていたが、そんな中、“達也の祖父の弟”という人がマイクを手に取ると、おもむろに余興用に用意されたステージに立った。十八番のカラオケを一曲披露するのかと思いきや、意外にも“漫談”をはじめた。相変わらず、ほとんど誰も聞いていないのだが、  「では、締めに、新郎・達也くんの出生の秘密をご紹介しましょう。」  そのとたん、出席者が“すわっ!”と、一斉にステージを見た。緊迫感が漂うなか、“祖父の弟”が、ひと呼吸おいてからゆっくりと語り出した。
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