ももたろう

　そうだ、学校へ行こう、と思った。

　まず、第一の理由が〈ゲームに飽きた〉ことだった。

　夏休みに入ってから毎日、朝から晩までゲームをしていたら、ついに積んでいたゲームソフト全部をひと通りクリアしてしまったんだ。

　それから第二の理由が〈学校からリコーダーを持って帰らないといけない〉ことだ。

　僕の小学校では、五年生の夏休みの宿題に〈リコーダーの練習〉があった。チェック表はお母さんのサインだけど、そんなの見よう見まねでコピーできちゃうから、サボっても大丈夫だと高をくくっていた。そんな僕は、なんと学校にリコーダーを置き忘れてしまったんだ。

　わざわざ担任の天野先生が電話で教えてくれたんだから、たしかだ。

　これじゃあ、リコーダーの練習ができませんから、空いている日に学校に来てくださいね――だってさ。

　だから八月一日の今日、僕は部屋着のＴシャツ短パン姿のまま、思い切って外に出てみた。まだ午前中で暑さがひどくないうちに、行ってこようと思ったんだ。