ももたろう

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 まず、となりの家のチャイムを鳴らした。 〈あら、アキラくん! 今、行くわね〉  すると間もなく玄関のとびらが開いた。サトミのお母さんだ。 「どうしたの?」 「サトミは?」 「今、朝ご飯食べ終わって、顔を洗ってるところ。遊びに誘ってくれるの?」 「そうです。ちょっと学校まで」 「そう! じゃあ少し待っててちょうだい。帽子と水筒もたせてくるから」 「はぁい」  僕は帽子も水筒も持ってこなかったけど、まあいいやと思って玄関の日影でのんびりサトミを待った。すると少しして不思議そうな顔のサトミと、サトミのお母さんが出てきた。 「はい、アキラくん」  そう言ってサトミのお母さんは僕に野球帽と大きな水筒をもたせてくれた。 「うちの旦那のお古で申し訳ないんだけど、無いよりは良いわよね?」 「ありがとうございます!」  僕は(やったぜ)とばかりに帽子を受け取ってかぶった。たしかに大人用の帽子はちょっとブカブカだった。 「調節すれば大丈夫そうね」  サトミのお母さんがそう言って、野球帽の調節ベルトをいじって、僕の頭にちょうどいいサイズにしてくれた。至れり尽くせり、なんて良いお母さんだ。僕のお母さんと交換してほしいぐらいだ。 「じゃあ、行ってきます!」 「お昼までには帰ってきてね」  僕とサトミは手を振って歩きだした。
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