0人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、母親とスーパーに行く予定のナオキと遭遇した。彼も僕らの集団を見て一緒に学校に行くと言って、加わった。
通学路の途中にある公園の脇を歩いていたら、日陰のベンチでしゃべっていたジュンナとサヤカ、リコが加わった。
これで十人。しかも双子の片割れ、ミノル以外みんな同じ五年二組。すごいことになっている。
あと十人でクラス全員集合になる。まさかそんなこと、あるわけない、と思った。
「そう言えば、ユウカは青森に旅行中なんだって。おばあちゃんの家があって、ねぶた祭りを見に行くって言ってた!」
ジュンナがそう言うと、サヤカが「そう言えばタマキも、ハワイだって」と思いだしたように言った。
一斉に「イィなあ!」と声が上がる。そしてクラス全員が集まる可能性もついえた。
「そう言えばトモヒロは塾じゃね?」
ナオキがそう言った。続いてリコも「それならヒデキとナオちゃんも来ないね。トモヒロと同じ塾だもん」と言った。そうか、そんなに塾に通ってる人がいたんだ……。
「じゃあ、あと女子はナツキだけだね。直接、電話してみよっか」
スマホを持っていたアヤノがそう言うと、何人かの同意を得てからナツキのスマホに電話をかけた。すぐにつながったらしい。
「なんか二組のみんなで学校に行くんだけど、来ない? え、なんで? 知らない!」
アヤノはそれからひと言ふた言交わすと、電話を切った。だれかが「どうだった?」と尋ねる。
「来るって。自転車かっ飛ばしてくるらしいよ」
僕は「そんなに急がなくても」と思わないでもなかったけれど、もうすぐ小学校が見えてくるころだから、全員集合するにはたしかに自転車を走らせるほうが良いだろう。
「あと男子でいないのは?」
サトミが点呼を取り始めた。するとジュンナが「ケンタ、リョウ、ショウタ、ツカサがいない!」と答えた。でも、この四人に今から電話したりはむずかしい、という結論になった。
「ワンチャン、学校のグランドでサッカーでもしてんじゃね?」
「ありえる」
双子がそう言っているうちに小学校の校庭が見えてきた。
「まさかぁ」
女子が数人、そう言っていた。僕も内心では「ありえないだろ、暑いんだし」と思っていた。
――いた。
そして、彼らも僕らの団体に気づいたらしく、サッカーをやめて駆け寄ってきた。
「なになに、これは」
「今日って全校登校日とかだっけ?」
ケンタとリョウがおどろきで引きつった顔をして僕らを指さした。
「ちがうよ。なんか、こう……二組のキズナ、的な?」
「意味わかんないー」
女子たちは勝手に盛り上がる。すると総勢十四人の団体に気づいた校長先生と天野先生が校庭に出てきた。
「キミたち、どうしたんですか?」
「な、なんで二組のみんながこんなに大勢で?」
慌てている二人の先生を前に、ちゃっかり者のサトミが前に出てきて言った。
「天野先生、これだけクラスメートが集まったんですから、ジュースぐらいおごってくださいよ」
「ええっ?」
すると校長先生はうんうん、とうなずいた。
「たしかに、このまま帰るにしても、この暑さですからね……熱中症が心配です」
「え……でも、全員に、ぼくが?」
天野先生は戸惑いながら「うーん」とうでを組んで悩みだした。
いつの間にか二組の女子たちが「ジュース! ジュース!」と大合唱をはじめている。
「……たしか、校長先生が夏休みに毎日一個ずつ食べる用のアイスが、職員室の冷凍庫に入ってました……よね?」
すると今度は校長先生が「うーん」とうでを組んで悩みだしてしまった。
「あ、あれは私の……私が……」
今度はユカが「アイス! アイス!」と音頭を取り始めた。今度は男子も一緒になって「アイス! アイス!」と合唱に加わる。もちろん、僕も一緒に。
「……はい、分かりました。校長先生の負けです。みんな、手を洗ったら職員室に来てください」
僕らみんなが思い思いにガッツポーズをかかげて「よっしゃー」とか「ラッキー」だとか叫んでいる。僕も学校に来てよかった、と低くガッツポーズを決めた。
最初のコメントを投稿しよう!