家族になるということ

「おいしそうなお店がいっぱいあるね！あっ、赤福あった！あっちのコロッケもおいしそ〜」

「あのお店のてこね寿司もおいしいし、スイーツ系ならハニポテがおすすめだよ！」

たくさんのお店が集まるおはらい町・おかげ横丁は多くの人で賑わっている。蓮は綾華のおすすめや自分が気になったものを買って食べたり、職場の人たちへのお土産を見たりした。

買い物をし、お腹もいっぱいになった頃、蓮の方から「行きたいところがあるんだ！」と言い、おはらい町・おかげ横丁を離れる。

「どこに行きたいの？案内するから」

「大丈夫！地図アプリがあるから！」

ポケットの中にあるものを握り締め、蓮は綾華に笑いかける。その心の内側には緊張と不安があった。

蓮が行きたいと思っていた観光スポットは、伊勢市駅から九分ほどで到着した。蓮と綾華の目の前には、太い縄で堅く結ばれた二つの岩があった。縁結びのシンボルとして有名な夫婦岩である。

「ここ、写真で見てこの目で見てみたかったんだ！すっごい綺麗！写真撮ろう！」

スマホを取り出し、蓮は夫婦岩を何枚も撮る。そして、表情を失っている綾華にレンズを向けた。

「綾華、一緒に撮ろう？」