家族になるということ

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綾華は何も言わず、ただ無表情にレンズを見つめる。その手は微かに震えており、伊勢神宮を観光していた時が嘘のように二人の間の空気が重くなり、冷たくなっていく。 「綾華!」 その空気を読み取った蓮は慌てて口を開く。その時、「デートしとんの?」と話しかけられた。蓮が声のした方を見ると、いつからいたのか老夫婦が立っている。二人は微笑みながら夫婦岩を見ている。 「懐かしいなぁ。ここでお前に告白したんやったな」 「そう!人がようけ見とる中いきなり言われて、恥ずかしかったわ」 二人は楽しそうに話す。もうすぐ金婚式を迎えるのだという二人は、歳を重ねているものの、頰を赤らめて話す様子は付き合いたてのカップルと変わらないように見える。 「何年付き合っとんの?」 「大学生の頃からなので、今年で六年ですね」 「二人の絆がさらに強く結ばれますよう祈っときます」 おばあさんがニコリと微笑み、蓮は「ありがとうございます」と頭を下げる。二人は会釈をした後、仲睦まじく手を繋ぎながら歩いていった。 「……ああいう夫婦、憧れるなぁ」 自然と蓮の口から言葉が出て行く。蓮は笑みを浮かべながら綾華に話しかけた。 「歳を重ねてもあんな風に一緒に出掛けられる夫婦って理想だと思う!思い出の詰まった場所を巡るっていいな〜」
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