家族になるということ

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綾華は零れ落ちる涙を乱暴に拭い、肩を大きく震わせている。蓮は綾華を抱き締め、必死に想いを伝えた。 「胸があろうがなかろうが、俺は綾華がいい!乳がんで失った胸は恥ずかしいものじゃない!綾華が病気と戦った証だよ!」 「蓮はそれでよくても、蓮のお父さんたちは絶対反対する!健康じゃない女なんていらへんって思われる!別の健康な彼女を作って、私のことなんてもうほっといてよ!」 「健康健康って……がんは日本人の二人に一人がなるって言われてんだぞ!!それにみんな遅かれ早かれ色んな病気になる。でもそれを一緒に乗り越えてく覚悟を持つのが結婚する、家族になる、夫婦になるってことだろ!!」 綾華の目が大きく見開かれる。蓮は綾華の濡れた頰に触れ、笑いかけた。 「……この世の中に、女性は数え切れないくらいいるよ。でも「家族になりたい」って思う女性は、綾華だけなんだ。綾華は?俺と家族になりたくない?」 綾華は涙を拭った後、首を横に振る。そして震える声で言った。 「別れたくない。……私、蓮のこと好きやよ。愛しとるよ。嫌いなわけないやん」 天照大御神が願いを叶えてくれたのかもしれない、そんな風に思いながら蓮はポケットから小さな箱を取り出す。その中には、あの日渡せなかった指輪があった。 「俺と、結婚してください」 綾華の左手の薬指で指輪が煌めく。二人は微笑み合った後、目の前にある夫婦岩を共に見つめ合った。
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