139人が本棚に入れています
本棚に追加
授業も終えた放課後。俺は2つのファイルを持って廊下を歩きながら人を探した。
目当ての人物は生徒会と風紀の人間。出来れば、生徒会なら書記、風紀なら2年生がいい。ぜったいに生徒会長と風紀委員長はやめてくれ。てか3年生も出来ればさけたい。
「なぁ、これってどこに運べばいい?」
前方に大量の書類を抱えるマリモと1人の生徒。1人の生徒は1年生で、マリモこと我らの同学年の王道転入生に書類運びを手伝ってもらっているらしい。
俺はその時ピンときた。あの書類はたぶん寮関係の書類。放課後に新入生の関係の書類が届くため、代理の総寮長の仕事が入っていた。多分それだ。そして、俺の手元にあるファイル。よし、物々交換しよう。
「アリス!」
俺はそれはいい笑顔で王道転入生こと七瀬有栖をよんだ。
七瀬有栖は生徒会長だろうが風紀委員長だろうがどんなに嫌味言われてもなにもダメージを受けずに仕事を押し切って果たしてくる。こんな素晴らしいいけにぇ…いや人物に会えたのは嬉しかった。
「あっ! 灯季! さっきぶりだなっ!」
七瀬有栖は元気にこちらに振り向いて挨拶してくれる。ちなみにクラスが同じなので今日何度目かの会話だ。
俺は七瀬有栖と一年生に笑顔を向けると同時に2人が持っている書類を確認。当たりだ。緑の付箋が貼ってあった。緑の付箋が貼ってあるのは寮関係の書類と決まりがある。ちなみに生徒会は黄、風紀はピンクだ。
「ああ、さっきぶりだね。アリス」
俺は七瀬有栖に手を軽く振ってから、1年生の方を見た。1年生は小柄な男の子。西区寮の美月葵くん。まだ1年生で正式な寮の役職についているわけではないが、彼は西区寮の1年生の点呼やプリント集めを手伝ってくれるいい子だ。
「美月君も久しぶり。それ、寮の資料だね。いつもありがとう」
「い、いえ」
「アリスも手伝ってくれてるのかい。ありがとう」
「どういたしまして」
美月くんは俺の顔を見て、七瀬有栖を見た。届けるべき人間が現れたのでどうしようか困っているようだ。そうそれでいい。
最初のコメントを投稿しよう!