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「半年間も同じ言い訳だ。一時的な問題ではもうないだろう」
「僕が小言から逃げるための嘘とは思わないですか?」
「お前が毎回、大量の仕事を持っていなかったらそう思うだろうな」
アリスが持っている書類と俺が手に持つ2つのファイル。どっちとも総寮長と副総寮長の仕事だ。決して東区寮長のやる仕事ではなかった。
生徒会長がアリスのことを見たので、アリスはパッっと花ひらくように笑った。
「忍。久しぶりだなっ!」
「ああ、アリス。久々だな。学年トップおめでとう」
「えへへ、ありがとな」
褒められたことにより笑顔はさらに輝くようなものになる。今までの俺らのやりとりなどなかったようだ。美月君はついていけてないのか棒立ちになっていた。
「アリス、美月。すまないが、この忙しい東区寮長に話がある。アリスはそのままその書類を届けてくれ。美月はこのファイルを風紀に頼む」
「えっ、あ、なまえ…いや、えっ、あ、はいっ!」
「あぁ、任せてくれ!」
とんとん拍子に進む話。王道転入生はもうただのいいやつで美月君は名前を呼ばれたことに感激をうけたのか顔を真っ赤にしてこくこくと頷く。まずい、俺の気持ちの温度から2人がかけ離れてく。
俺が何か言う前に、生徒会長はファイルを持ってとっと去っていった。俺がついてくるのが当然だと思っているあの背中を蹴りたい。
苛立ちを押さえて、どうしようか悩むフリをする。いや、答えは決まっている。追いかけるしかない。けど、こうなんというか気持ち的に抵抗をしたいのだ。
「あの、東区寮長。いっちゃいましたよ?」
「ああ、うん、そうだね。じゃあ、美月君お仕事お願いね」
「はいっ!」
ちなみにアリスはすぐ消えた。王道転入生は仕事が早いのだ。
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