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「……家族がヤバい。お前もラッキーだったな」
「ああ。ではそういうことだから」
穏やかに微笑んで、おれたちを連れて車に向かおうとする波鶴ちゃん。
「待てよ。お前、何歳?」
「650歳」
「……ッ!? ハァ!? 俺より年上じゃん!?」
「ははあ。若輩者か。どうりでやかましい」
「650歳って……日本に不老の術が伝来したのが650年前じゃねーの!? 安定した術式が確立したのは550年前って」
「ははあ。ではお前は術式が安定してから不老になった人間だな」
「ぐっ……」
今こいつ「ぐっ……」って言ったわ。図星なんじゃん。わかりやすいな〜。
「650年前の不老の術なんて大博打でしょ!? お前……イカれた男だな!!」
「……色々あっただけだ」
影のある声音で言って、波鶴ちゃんは軽く目を伏せた。波鶴ちゃんは不老になったいきさつを話したがらない。そこに踏み込むなんて……!!
「あー。色々あったんだ。ごめんね」
意外とあっさり男は謝った。見かけより素直な性格らしい。
「ああ……」
波鶴ちゃん、明らかに動揺した顔をしてる。
「……葉介」
緊張した声で呼びかけられる。
「うん」
何を言われても受け入れよう。だっておれは波鶴ちゃんの夫なんだから。
「私は若い頃イカれた男だったし今もある程度イカれているが……それでも生涯を共にしてくれるか?」
「する!! めっちゃする!! 超イケてんねー!! おれの旦那さまマジでかっこいいわ……!!」
「ならいい。ありがとう」
波鶴ちゃん、安心してはにかんだ笑顔を見せてくれた。よかったー!
「わー。新婚さんだー。俺は何を見せつけられてんの??」
「新婚初日に絡んでくるお前が悪い。では。私の色々なしがらみがなくなったら、もう一度ここへ来よう。楽しみに待て」
波鶴ちゃんの瞳は、もう一度戦闘狂の色にギラっと光った。
「ふふん。めでたい日だから見逃してやるよ。俺の気まぐれに感謝しな」
狐面の奥の目もバチバチと火花を散らした気がしたけど、今日のところはバトル回避っぽい。よかったー!!
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