5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
私が小学六年生の時、オクスリサマという妖怪の噂が町内であった。
そこは対して大きい町でもないけど、歴史だけはやたらと古くて、言い伝えめいたものや怪談にはことかかないところだった。
ケガをしたり病気をしているときに、学校の裏山でオクスリサマを呼び出すと、それらに効く薬をくれる。
その代わりに、なにかの犠牲を捧げなくてはならないという。
ありがちだな、と今でも思う。
ある日、私の二つ下の妹が病気になった。
呼吸器系の難病で、妹は成人するまでは生きられないのではないかと医者に言われた。
私は、オクスリサマが棲むという山へ走った。
どんな犠牲を求められるかは分からないけど、妖怪だろうとお化けだろうと、なんでもくれてやるつもりでいた。
それで、私と妹は逆転すると思った。
地味な容姿の私と比べて、妹はほんの小さいころから、とてもかわいらしい見た目をしていた。
小学校の中学年になるころには、私は妹との、残酷なまでの魅力の差に気づかされていた。
周りの大人や、学校の子たちが、私と妹を見るときに、そのまなざしの輝きは明らかに違う。
妹は性格もよかった。
裏表なく私を慕ってくれて、両親の言うことをよく聞き、頭も回って利口だった。
そんな妹と暮らしていると、妹のように振る舞えば愛されるということはいやというほど分かっているのに、私はいつも正反対の行動ばかりして、人から全然好かれない生活を送っていた。
最初のコメントを投稿しよう!