プロローグ

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プロローグ

ぼくは泣き虫だ。 ぼくの写真は泣いているものしかないほどの泣き虫だ。 そのせいで、みんなぼくを相手にしなくなった。 ぼくといっしょにいると、悲しくなるからだって。 そのうち、ぼくは一人になった。 さびしくなんかなかった。 さびしさよりもなみだがポロポロこぼれちゃうから。 だから、ぼくはだいじょうぶ。 小学校の時の自己紹介カードを見つける。 先生ももっと明るいことを書こうと言っていた。 でも、怒られたのかと思って涙が出た。 あーあ、なんで僕はこんなことをずっと続けているのだろう。 僕の涙腺は脆い。 今も静かに悔しさの涙が溢れている。 お母さんが編んでくれた大きめのカーディガンの袖はもうヨレヨレだ。 せっかく、長く着られるように作ってもらったのに。 高校生までかな。 濁流は止まらない。 止まるわけがない。 僕の涙が止まったら、僕の心臓が止まるのと同じくらいなんだ。 「いってきます」 「いってらっしゃい」 笑顔で送り出してくれるお母さん。 お父さんはどうせ、朝早くに家を出たのだろう。 僕は家のドアを開けて、飛び出していった。 でも、目からまた溢れる。 痛い。 擦ったところに涙が流れて痛い。 ああ、止まったらいいのに。
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