そうだ、刑務所へ行こう

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 ある昼下がりのコンビニ。私は、おにぎりコーナーを凝視していた。  私はいわゆる貧困老人だった。もう、金もつきた。持病もある。それでも役所では生活保護を断られた。  もう、今は何も食べられない。おにぎり一つ買えない。買えないから、万引きする予定だ。  どう考えても万引きした方がいい。  上手くいけば、刑務所に入り、適切な介護も受けられるかもしれない。誰に何を言っても「自己責任」となる。だったら、犯罪者になって刑務所に行った方がいい。  そうだ、刑務所へ行こう。  目をぎゅっと瞑り、おにぎりを掴む。  トントン。  同時に店員に肩を叩かれた。外国人の店員で、肌の色は真っ黒だ。おそらく東南アジア系の若い男。少し言葉は訛っているが、問題なく日本語は聞き取れた。 「お客サン、おにぎり一個の万引きじゃ刑務所イケマセン」  まるで自分の行動を見透かすかのように言われてしまった。よっぽど挙動不審だったのか。あるいは似たような事をする貧困老人が多いのかもしれない。 「くっ……」  悔しいが、店員に見つかったのなら仕方がない。逃げようとしたところ、店員は何か言ってきた。 「確実に刑務所行ける方法あるね。死体運ぶんだけど、どうデスカ? 一緒に運ぶ?」  思ってもみない展開だった。まるで「アイスでも食べに行く?」というような軽いノリで、楽しそうだった。反射的に私は頷いてしまった。  犯罪の予感。  決して良い未来は無いだろう。それでも「自己責任」と踏みつけられるよりはマシ。今よりは楽しい未来を想像できた。  そうだ、刑務所に行こう。
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