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僕はこの糞暑い時に彼女にせがまれて動物園に行った。僕らは麦わら帽子を被り、タンクトップにバミューダパンツを組み合わせ、足には通気性の良いショートソックスにメッシュシューズといった出で立ち。天気は上々と言うか嫌になる程、かんかん照りだが、これ幸いと彼女は大好きなアイスクリームをねだりまくった。
「君さ、動物よりアイスクリームが目的で来たんじゃないの?」
「だって暑いからしょうがないじゃない」
そう言えば許されると思っている彼女は、ほとんど遠慮がない。
「あんまり食うと虫歯になるし脂肪がつくぜ」
「大丈夫、ちゃんと歯磨きするし、無茶苦茶歩いてるから」
まだ若いからそれでいいのかもしれないと納得してしまう僕は、竜巻に呑み込まれるように彼女のペースに巻き込まれてしまう。
彼女は猫を飼っていることもあり、ネコ科の動物が好きでありきたりと言うかありがちと言うかライオンがお気に入りらしく一番長いことライオンを眺めていた。
「あたしもライオンみたいにお肉一杯食べてみた~い」
彼女は大の焼き肉好きなのである。
「君、やっぱり動物鑑賞より食い気が勝るんだね」
「ばれた?」
呆気なく認めた彼女を見ている内、食いしん坊のマーモットを連想して彼女の肉への執着を断とうと僕は叫んだ。
「そうだ!マーモットの所へ行こう!」
「マーモット?」
「リス科なんだけど大きなネズミみたいでさ、それでいてプレーリードッグやミーアキャットみたいに二本足で立つんだよ。で、ペンギンみたいによちよち歩くんだ、エサを求めて。その動作がとっても愛嬌があるんだ」
「でも、無名だから動物園にはいないんじゃないの?」
そう言われていないかもしれないとテンション駄々下がりになったが、案内スタッフを捕まえて聞いてみると、いるとのことで来た甲斐があったとテンション爆上がりになった。
で、早速行ってみると、狭苦しい小屋に何匹かいてガラス張りになった前面から見物出来るようになっていた。
イメージと違って全然活気がなく素より生気が感じられない。みんなぐったりと休んでいる。それを見てまたテンション駄々下がりになってしまった。
「何、この子たち、廃人みたい…」
彼女にそう言われても仕方ない有様だった。嘸かし野性に返りたいだろうに…と可哀相になったが、ガラスに穴が空いているのに気づいて案内スタッフが言っていたことを思い出すと、またテンション爆上がりになった。
「そうだ!エサ買ってこ!」
僕は小屋の裏手にある売店で細長いスティック状のエサを買って戻って来た。
「これをやれば元気になるよ!」
僕は早速エサをガラスの穴に差し込んだ。
すると、匂いで気づいたらしく一匹のマーモットが上体を起こして二本足でよちよちと近づいて来た。
「ほら見て見て!頂戴頂戴って催促するみたいに前足を動かしてるぜ!」
「ホントだ!おもしろ~い!かわい~!」
穴の位置が丁度立ち上がったマーモットの口辺りにあるのでマーモットはリスみたいに両手否両前足でエサを掴むと、二本の前歯をむき出しにして一生懸命食べ出した。
「咀嚼音が凄いわね。なんだかこっちまで食欲が湧いてきちゃう!だから昼も夜も奮発してくれなきゃダメよ!」
「おいおい好い加減にしろよ」
僕のテンションは直滑降ジェットコースターみたいに急激に下がって行った。しかし、彼女は太ると、おっぱいもデカくなるので、それもいっかと思えて来て登り坂を猛スピードで急上昇するジェットコースターのようにテンションが爆上がりになるのだった。
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