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「繋がってないよ」
突然、椿くんの声が聞こえた。
「宮本くんと河本さんは、運命の相手ではないよ」
「は? なんだよ、お前」
「運命の糸で繋がってるのは、この教室内で言えば大関さんと久我くんくらいかな」
「は? あいつらはもう付き合ってるしそりゃそうだろ」
「まぁ、そうだね。でも、田中さんと新庄くんは元々繋がっていないから別れるよ」
宮本くんは椿くんの言葉に田中さんと新庄くんの方へと振り返った。あたしも同じように、二人のことを見てしまう。
少し離れて教室を出ていく姿に、なんとなく違和感を感じる。だけど、二人が別れるなんて噂は聞いたりしていない。
「まぁ、そう言うことだし、あんまりしつこいのもどうかと思うよ。さっきからうるさくて集中できないから別の場所でやってくれない?」
真っ直ぐに宮本くんを見ながら、椿くんは机の上のノートをトンッと指で叩いてから、にっこりと笑った。
「……うざ。もういいよ、またな、凪沙」
宮本くんは席を立つと、かったるそうに教室を出て行った。
もしかして、あたしのこと助けてくれた?
ノートに向けられた椿くんの横顔。文字を辿る瞳はまつ毛が長くて、透明感ある肌は思わず触れたくなるほどに綺麗だ。
椿くんは、あたしの好きな人。
もしも、運命の糸があるとするならば、椿くんと繋がっていたい。
宮本くんが「運命の糸で繋がれている」なんて乙女チックなことを言うとは思わなかったけれど、それに対して真面目に返す椿くんが、やっぱり冷静で素敵だと思う。
はっきりと、あたしと宮本くんは運命の糸で繋がっていないって言ってくれたのが、嬉しかった。
ここはやっぱり、お礼を言うべきだろうか。
だけど、元はと言えばあたしの所に来た宮本くんがうるさいのがいけなかったんだ。だとしたら、あたしのせいでもある、よね。
そっと椅子から立ち上がって、教室から出る事にした。
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