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プロローグ 妖怪に勝ってほしい
小学校から帰ってきた私はテレビの前に正座で座っている。
今から始まる『咲雷の巫女ピュアエクレール』を見るためだ。
どうして私がこの番組をこんなに意識して見ているのかと言うと、私のクラスメイトがピュアエクレールを演じているからなの。
テレビの中では正義の巫女戦士ピュアエクレールが悪の妖狐黒明姫と対峙していた。
私はハラハラしながらツインテールにまとめている自分の髪をぎゅっと両手で握った。
「エクレールさん、私はただ広めたいだけなのよ。妖怪の恐怖を。怪談すなわちホラーテールでね」
黒衣の美女に立ち向かうのは巫女の装束に似た戦闘服と目の周りが隠れるマスクを身につけた黒髪の少女だ。
「黒明姫、行方不明の子供たちはどこにいるの!」
「ふふ、人の恐怖というものはなかなか変わっているものでね。元は人の一部というのにそれが恐ろしくてたまらなくなるのよねえ」
黒明姫がそう呟く姿は宙に浮いている。
黒衣の美女が立っているのは体育館の闇の中からはいずりながら現れた大きな骸骨の肩の骨の上だ。
「今宵のテール妖怪は怪異テール大どくろ、どうぞ楽しんでね」
テール妖怪は黒明姫が学校の怪談、ホラーテールに自分のしっぽ、テールを付けて凶暴化させた妖怪だ。
今回は夜の学校で動き回る骨格標本という怪談に黒明姫のしっぽが1本くっついてテール妖怪化した。
はいずっている上半身だけでもエクレールの3倍の高さはある大骸骨の肋骨の中には生徒たちが閉じ込められている。
「黒明姫、みんなを解放しなさい!」
「いいわよ。いつものなぞなぞバトルに勝ったらね。謎時空よ、拡がりなさい」
黒明姫が言い放つと途端に薄暗い闇のドームが体育館中に広がっていく。
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