0 妖怪の話し相手がほしい

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ

0 妖怪の話し相手がほしい

 生まれた時から気が付くと私には2本のしっぽが生えていた。  しっぽと言ってもただの獣のしっぽじゃない。  私のしっぽはガラスのように透き通っていた。  透明だけど、私がさわると毛のような感触は感じられる。  けれど、私がさわっても自分のしっぽの方にはさわられている感覚はない。  小さい時に私以外の人にしっぽが生えていないことを私自身が何となく理解した。  私は両親にしっぽのことを尋ねたけれど、両親には私のしっぽが見えないようだった。  私のしっぽが見えないのは両親だけではなく、私以外の人には私のしっぽが見えないこともわかった。  私の両親は私を病院に連れて行ってくれた。  そこでお医者さんが教えてくれたのは「まぼろしの腕」というお話だった。  事故などで腕を失った人が失った腕の感触を感じることがあると言う。  私のしっぽもそのまぼろしの腕と似たような症状かもしれないとお医者さんは説明してくれた。  つまり私に生えている2本のしっぽは「まぼろしのしっぽ」ということだ。  お医者さんの説明に私自身も納得するところがあったので、それからは自分のしっぽはまぼろしとしてあまり気にしないように過ごしてきた。  その状況が変わったのは私が小学校に入学してからだった。  小学校の入学初日、私が自分の席に血まみれの女の子がいるから座れないと言ったら、ふざけないでと先生に怒られた。  ロッカーの中から伸びて来た黒い人影から同じクラスの女の子を私が助けようとしたら、その子を押し倒して怪我させてしまった。  私が通う小学校には幽霊と呼ばれる存在がとてもたくさんいたのだ。  私は入学してすぐに危ない女の子と周りに思われるようになった。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!