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でも、せっかくなら誰かと妖怪やなぞなぞのことでおしゃべりしたいなあとは思っている。
「人間はだめだから、私と同じ妖怪の話し相手が欲しいなあ」
それなら椎奈に自分のしっぽの秘密を握られておびえている日々のことも相談できるかもしれない。
そこまで考えて私はぴたりと立ち止まった。
「何考えてるんだろ私、妖怪なんてテレビや本の中だけの想像のものなのに」
現実を思い出して私が色々と考えを巡らせていると自分と同じ下校途中の集団が目に入る。
その先頭に眼鏡をかけた黒髪の女の子がいる。
嫌なやつに見つかってしまったと私は思った。
私の正体を知っているクラスメイトの椎奈だ。
学級委員長をしていてクラスの中心的な存在だが、なぜかことあるごとに私に絡んできていた。
「あれえ、妖怪の鈴葉じゃない」
クラスメイトの集団からバカにしたような声がかかる。
私のことを妖怪と言ったのは椎奈の取り巻きのひかりだ。
スポーツ万能で小麦色に焼けた肌とショートカットの髪の元気いっぱいな印象だが、いつも椎奈のそばにいることでナンバー2を気取っている。
ひかりたちの言動を受けて、先頭にいる椎奈が声をあげる。
「ちょっと、妖怪なんて言っちゃだめだよ」
おいおい、そもそも私のことを妖怪と言い始めたのはこいつなのに。
まあ……ウソじゃなくて、本当に妖怪なんだけど。
「ひとりで帰ってるなんて、さびしいわねえ」
ひかりの言葉にそんなの妖怪の勝手でしょと思いながらも反論してしまうともっと攻撃されてしまうので、私はうつむいたまま早く行ってほしいと願う。
いや目の前からだけでなく、このいじめっ子たちが世界から消えてなくなったらどんなにいいことだろうといつも考えてしまう。
妖怪の世界になればいいのに。
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