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あの日、私を捕えるべく放たれた追っ手から私を救ってくれたヨハンは、それに留まらずなんと身寄りのない私を引き取ってくれた。もしよかったら一緒に暮らそう――そう、うららかな春の陽のような優しい微笑みを湛えて言ってくれたのを、今でも鮮明に覚えている。
それからも、ヨハンはずっと優しかった。私が二度とあんな被害に遭わないよう、既に魔女狩りが廃止されていた隣の小国へとわざわざ移住してくれたりもして。どうして、そこまでしてくれるのか――ある日、どうしても抑えきれなくなり尋ねてみると、
『――実は昔、僕の友人も魔女として告発され裁判にかけられたんだ。そして……彼は、無惨にもその尊い命を奪われた。その時……僕は何も出来なかった。足が竦んで動けなくて……彼が火刑に処されるのを、ただじっと見ていることしか出来なかった。だから……そうだね、これは自己満足に過ぎないんだろう。君を守り抜くことで、せめてもの彼に対する贖罪に――そんな、浅はかな自己満足に過ぎないんだろうね』
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