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そう、自嘲するように淡く微笑み話したヨハン。彼、ということはその友人は男の子なのだろう。魔女狩り、という用語から被害者は女性であると連想されるかもしれないけど、必ずしもそうとは限らない。割合としては高くないかもしれないけど、男性の被害者も一定数いると聞いている。実際、父が例の裁判の被害者となったように。
ただ、事情がどうであれ……どうか、そんな表情をしないでほしい。浅はかな自己満足だなんて……どうか言わないでほしい。だって、紛れもなく私は貴方に救われて……今だって、貴方がそばにいてくれるから、私はこんなにも幸せで……そして、そんな貴方のことをいつしか――
そして、そんな自身の想いに気付くと同時に悟らないわけにはいかなかった。それが、決して叶わぬ感情であることを。何故なら――彼には、愛する妻がいるから。私と出会うとうの前から共に時間を過ごしてきた、最愛の女性が。
この気持ちを知られてしまえば、きっとヨハンの心に負荷を掛けてしまう。優しいヨハンの心に、多大なる負荷を。だから、彼には決して知られることのないよう心の奥底に秘めたまま、いつしか枯れ果てるのを待つしかない。
――あの日までは、そう思っていた。
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