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「……えっと、ここは何かのお店ですよね?」
とは言え、流石にこのまま無言で立ち去るのも些か抵抗を覚えてしまう。すると、少し困惑する私の問いに対し、
「――見て分からないかい、お嬢ちゃん。ここは何の変哲もない、ただのしがない薬屋だよ」
「……あ、はい」
……うん、だろうね。なんか、カウンターの隅の方に怪しげな薬草みたいなのが見えてるし。修飾部分に関しては突っ込みどころしかないけど。……まあ、それはそれとして――
「……でも、おばあさん。ここに、こんなお店ありました? この辺りは頻繁に通ってますけど、今まで一度も見たことないですし……それに、他の人達に至っては気付いてもいなかったような……あっ、ごめんなさい!」
問いの最中、慌てて言葉を途切る私。……しまった、ついうっかりこんなお店とか――
だけど、特に気にした様子のないおばあさん。どころか、どこか意地の悪い笑みを浮かべ口を開いた。
「――まあ、そうだろうね。あたしは今日、たまたまこの辺りに立ち寄っただけだし……それに、ここはあたしの同類にしか見えないからね。――そう、あたしと同じ魔女にしかねえ」
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